◆店舗を増やされていかれて、どんなご苦労がありましたか?
目黒のお店が流行りだしたら、大家さんから家賃を上げるって言われるし、更新が一年になるしで、これは早く店を探さなければ・・・と思っていたら、友人が自由が丘にいい物件を見つけてきてくれました。それで、1999年に自由が丘にお店を移しました。
そのお店も始めの1年はまったく流行らなくて、でも2年を過ぎると行列ができるようになりました。そうなるとまたいろいろな問題がおきてきました。あまりの忙しさに疲れてつぶてしまうものや、家に帰る時間が無くなって家族との問題を抱えるもものでたりと人の問題で苦労し、それに加えて、税金が増えて、これだけ頑張っているのにみんな税金にもっていかれて・・・と理不尽な思いをしました。そんな思いをするのだったら、店を増やして、いい会社にして、人が働きやすい職場にしていこうと思いました。店が増えれば、協力し合って働きやすい環境が作れるし、仕入れもコスト削減することもできるし、そうなればいいなあと言う気持ちで、店舗を増やしていきました。僕も以前は全ての店舗にシェフとして厨房に入っていました。
でも、僕が入っているうちはお店も勢いがあったのです。でも、店に出なくなると、売上が2/3になり、半分になり・・・と2店舗が潰れています。
決して、その店の店長は不真面目だというのではないのです。馬鹿まじめだったりするのですが、ただおいしければそれでいいかというと、それだけでは決して流行らないのです。店長の危機感が薄かったのだと思います。
そんな経験から、僕はお店に出ないようになりました。もう2〜3年になりますね。それぞれの店長の個性に任せて、「責任を自覚して勝手にやれ!」って言っています。人育ては大変です。常にどうやったらいいか迷いながらの経営です。(笑)
◆新事業を立ち上げられたようですが?
はい、今年の6月に 株式会社アマートというブライダル事業の会社を 株式会社ヌーヴォという広告制作(映像・グラフィック・WEB・撮影・ヘア&メイク)を経営している奥秋泰男と立ち上げました。
現状の店舗の中でお金をかけずに売上の底上げをしたいと考えていまして、店の定休日やアイドルタイムを有効利用して、人前式やレストランウエディングができないものかと、奥秋に相談しました。しかし各店舗ともスペース的に難しくて、でも立食形式のカップリングパーティくらいならできそうで、それなら、そのパーティーを、アマートに登録をしていただくためのきっかけ作りに利用してもらい、結婚が決まったら、ヌーヴォーさんで結婚のプロデュースができるような、入口から出口までを協力し合える組織作りができると考えました。
◆今後の目標についてお聞かせください。
従業員たちは、店に朝9時に入って、夜12時ごろまで働いています。その間休憩は一時間くらいしかありません。8時間労働なり、せめて隔週2日の休みが取れるなりできるようにしたいですね。そのためには、総トータルの時間数の調整をして、必要と有れば人も増やさなければならないと考えています。人を増やすということは人件費が膨らみます。そのためにも、アマートのほうをがんばってその利益で、従業員が何とか人間らしく仕事ができて、みんなが喜べるような会社にしたいと思っています。僕が経営者としての責任を果すことで、従業員も自分の責任をまっとうできるような会社にしたいですね。どうしても今までは、コックだから当然だろうとか、町場のレストランはこういうものだとか、そういうことをしてしまうと資金繰りがうまくいかなくなるから・・・とかいうようないろいろな理由があったのですが、これからはそれらを払拭したいと思っているのです。
昔は魅力のある親方がいれば、蹴られても殴られても安い給料でも一緒にやりたいという若者がいた、そういう世界だったのです。しかし時代の流れで、これからの人材の育て方はそうはいかなくなってきました。職場環境を整えることは、良い人材を育てる土壌作りだと思っています。
ゆくゆくは、システム化された教育プログラムも必要だとは思っています。ただ、当社の店舗は、それぞれシェフの個性を大事にしてきています。僕もシェフである経験から、それぞれのシェフの個性は活かしたいのです。8時間労働が実現したら、組織作りや賃金も含めてルール作りをやりたいですね。ひとつひとつ階段を昇っていくことだと考えています。
たまに昔のお客様からの指名があったりすると、銀座のお店で厨房に入ることもありますが、早く総料理長を育てて、厨房のほうは全て任せて、私は経営のほうに専念したいです。
◆家ではお料理はされるのですか?
いいえ、全くしませんよ。冷蔵庫には飲み物しか入っていません。(笑)誰か作ってくれる人がいればいいのですが・・・友人たちは、プロに自分が作ったものは恥ずかしくて食べさせられないといって誰も作ってくれません。プロだから作る大変さを良く分かっているのですよね。だから人に作ってもらったら、こんなに嬉しいことはありません。それがたとえあまりおいしくなくても、全然気になりませんよ。そういってもだれも本気にしてくれなくて・・・(笑)
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