◆ まだ26歳でいらっしゃいましたね。ご苦労は?
入社した当時は大変でした。まだ製版業というのは職人の世界でしたし、社員を後継者にといっていたのに、突然身内が入ってきたわけですから、そういう意味では、かなりの葛藤がありました。
入社して、先代に言われたのは、「しばらくは観察をしなさい。見えてくるものがあるから」ということでした。仕事内容、社内の力関係、人間関係、部所内の関係・・・など会社の全体像を知り、そして社員一人一人とコミュニケーションを図ることから初めました。そして、それまでのお得意先、仕入先をすべて回りました。それと同時に数字を押さえるために経理学校にも通いました。そうやって短期間で経営のノウハウを学んでいきました。そして自分の力を認めさせたいと思い、今までの自分の人脈もフルに使って新規開拓をし、営業としてガンガン仕事を取っていきました。
◆28歳で社長に就任されましたが、その後の経過についてお話ください。
私が入社した当時は職人の世界で古い体質や慣習があり、それを改革するために、かなりの戦いがありました。話すだけではだめなので、無理をして非常に高額のモノクロスキャナーを購入しました。それをきっかけにして、このスキャナーがあるから、タバコはダメだし、土足も厳禁と近代的な工場を作るための第一歩として、工場内の清浄化を図りました。また営業の仕方の改革にも取り組みました。1985年から改革に取り組んでいたことが、1990年代のデジタル化の波に対応できる体質になっていました。職人の親分とは2年くらい闘いましたが、最後には「社長のやりたいことがわかった」と言い、その後は最大の協力者になってくれました。そこから会社の近代化が急速に進みはじめました。
創業者のすばらしかったことは、私が社長を引き継いでから、いっさい口出しをせず、全て私に任せてくれました。ありがたいことです。私が経営者としてたいへん参考になったのは、先代が入っていた中小企業家同友会という経営者の会で、そこで「経営理念」や「経営計画書」の作成をすることにより、今の会社の位置を確認して、1年後5年後の目標設定をすることができました。これは私の会社経営の灯台の明かりのようなものでした。その後、毎年経営計画書を作り続けています。
◆御社の経営理念はどのようなものですか?
先代が作った経営理念「理にかなった経営・理にかなった仕事・理にかなった生活」そして、私が作った経営基本方針「Good Company 良い会社を目指そう・お客様第一主義」を掲げています。Big Company ではなくて、Good Company です。
良い会社を目指すという中で、2001年ISO14001(環境)を取得しました。環境問題はこれから大きなテーマになると感じ当社の社会に対する責任として環境マネジメントシステムに取り組みました。これはトップが強い意志を持って取り組むことが重要なので、私も社員と一緒に月2回の勉強会を10ヶ月取り組みました。取得後、全社を挙げての取り組みの実績が認められて、昨年(18年)
第5回印刷産業環境優良工場として、
経済産業省商務情報政策局長賞を受賞しました。このような一連の取り組みは、理にかなった経営、そして良い会社を目指すという理念から生まれてきたと思っています。その後、
プライバシーマーク・情報セキュリティマネジメントシステム「ISO27001」の取得、グリーンプリンティング(GP)の認定を受けています。
lこれらは、Good Company を目指す中での取り組みです。社員が誇れる会社にすることが私の役目だと考えています。
◆第一製版さんのお仕事についてお伺いします。
第一製版は1948年創業で、新聞・雑誌広告の制作・製版・送稿データ作成、画像処理、各種印刷をやっています。例えば、新聞の中にはたくさんの広告が載っていますが、そういったモノクロやカラーの新聞広告の製版をしています。超高速の輪転機に新聞用紙や新聞用インクという条件の悪い印刷で、最高の仕上がりを要求される画像処理の製版です。現在広告製版におけるデジタル化やオンライン送稿化はスピードが加速しています。
印刷業界のデジタル化が本格的に始まったのは1990年で、1995年を境に急激に進みました。このようなアナログからデジタルへ移行する際、コンピュータ技術による専業者の優位性の崩壊、デジタル化による価格の低下、デジタル対応設備への投資の増加などの経営的な問題点があります。