◆どのように事業を進められてきたのでしょうか?
結婚した当初は、株式会社栗田製麺所という会社で、大手スーパーのルートセールスを得意としていました。当社の数十台の配送車に他社の食品メーカーの商品も預かって一緒に当社の車に載せて一緒に配達していました。毎日10〜60数店舗の複数チェーンスーパーを一店舗一店舗まわって配達していました。ところが各スーパーがセンター方式をとるようになり、センターに一括納入となりました。そのため、その自社ルートセールス物流部門が必要なくなり、大手食品メーカーの参入も増えてきたのです。そこで大阪に調理麺というカテゴリーがあるということで、その調理麺を関西で習い、関東で最初にスタートさせました。ところが大手スーパーで販売しても全く売れませんでした。ちょうどコンビニエンスストアが伸びだした時代で、ここでこの調理麺が売れ出し、コンビニエンスストアの出店が売り上げの増大になりました。年間1億円の売り上げが毎年1〜2億円ずつ上がっていき、それにあわせて設備投資をしていった時代でした。各コンビニエンスストアもまだ規模がそれほど大きくなく、6つのコンビニエンスストア本部でプライベート商品を作ってもまだ製造できる時代でした。
この調理麺は、夏場が冬場の3〜4倍の売り上げがあります。冬場の売り上げをつくらなければいけないと思い、なにか新しい商品をということで、焼きそばやパスタ、デザートも作ることになりました。これにより、生麺を作り、麺を茹でて葱ぐらい切っているというような時代は終わって、野菜も色々洗って、切って、炒め、スープも作り、ソースも作る状況に変化した中で、栗田製麺所では、デザートやパスタは売りづらいという声が営業から上がり、社内公募をしみんなで考え、社名をクリタエイムデリカと変更しました。
クリタは創業者ファミリーの名前です。製麺業から惣菜全般を目指すということで、クリタエイムデリカと名づけました。エイムはAIMで目指すと言う意味です。同業他社もいっせいにカタカナの社名に変更をしていった時代です。
◆会社の規模がどんどん大きくなっていきましたね。
社名変更した時期はまだそんなに大きな規模ではありませんでしたが、売り上げが25億円を超えた頃から社員数も増えました。現在社員が62名、パートが300名です。昔は社員もパートも差が無い、学歴も関係ない人は皆同じと思っていました。しかし今は、社員は会社の利益のうち受け取るものが多いですから、社員として何をするべきか、何をしなければならないかという話を社員にしています。
◆人材難であると伺いましたがどのようはご苦労があるのでしょうか?
今も社員が一つの方向に向いているかというと自信がありません。営業部の社員に対して、製造部の社員とは素質が違います。製造部の社員たちには、靴の並べ方、挨拶の仕方、返事の仕方から教えていかなくてはならないのです。社員になっていない人たちは、まだまだそれさえもできていない状態です。以前は、毎日来てきちんとシフトを守るこれができるだけで社員にしていました。
今でも現場の長が育てることに疲れると「あんなやついらない!どうにかしてください」と、私に甘えてくることがあります。そんな時には、「あんなやつしかいないんだよ。あの子たちを階段一歩、いや半歩でいいから上がらせないとだめなんだよ。その子たちが上がっていけば自然と上がった子たちが来るから、そうやっていかないと中小企業は人材を得ることができないんだよ」と言っています。人材難は常につきまとっています。
当社には、フィリピン、タイ、ブラジルから働きに来ている人が多くいます。一番心配なのは、不法就労の問題です。偽造ビザは私たちには見抜けません。しかし最近わかったことですが、よく働く子に限って偽造が多いのです。ハングリーなんですね。でもちょっと危ないと思ったら、警察にビザを持っていって確認してもらうようにしています。警察署ともネットワークを組んで、定期的に書類を提出して確認をしてもらうようにしています。彼らはこちらの空気を察知して、すぐに消えてしまいます。
ところが、正規のビザを持っている外国人就労者は日本人よりわがままです。日本の大手企業が甘やかしたこともありますね。
◆食の安全、という問題についてはどのようにお考えですか?
まずは、CSR(企業の社会的責任)や、コンプライアンス(法令遵守)をしっかりとやらなければいけないと考えています。仕入れ品の安全確認は必ずしています。当社の基準値があり、それに不合格の会社は取引しません。仕入先は当社より規模の大きな会社が多いです。最近は急に食の安全に対して関心が深くなり、原材料費の占める割合がかなり高く、売り上げはあるが利益が低いという状態です。売価が平均330円、原材料比率は35%ほどです。その中の半分が食材、あと半分が包装資材です。
何か食の安全に関わる問題が発生した時はその食材はトレーサビリティがだいだい2時間で出来るようになっています。今日出荷した商品はどこの何を使いましたと記録を取りながらの製造体制になっています。人力と費用をかけています。
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