厳しい状況の中でしょうか、富士国際旅行社の強みとは?
歴史とその中でつくってきたお客様との関係、それに社員の旅に対する意識です。旅は単なる遊びと考えているのではなく、NPO、労働組合、学校の先生の団体、テーマを持った集まりなど、目的を持って社会活動を行っている団体がお客様の中核を占めています。長年の付き合いの中で、お客様の求めているものを提案することもできるようになりました。
ヨーロッパの視察団なども国内の手配業者を通さず、直接手配しています。スイス・アルプスのホテルや山小屋は何十年の付き合いですから、信頼関係が出来上がっています。長い歴史の中で、現地旅行社、ガイド・通訳、仕入れ先との信頼関係を大切に、協力をしながら共存していきたいと思っています。
旅とは、夢と感動をつくるものです。心に残る感動は一緒に行く仲間がいてより大きなものとなります。「見るたびからする旅へ、知るたびからふれあう旅へ」というのが当社のテーマです。旅を共有したお客様たちが、新しいサークルをつくって楽しんでおられるのも嬉しいことです。
現在当社は20名規模の会社ですが、管理部門は1割、他は営業部門です。営業部門に事務職はつくらず、全員が企画、営業、添乗、料金の請求などすべてやり、裏方を作らない方針です。事務職をつくると、どんどん事務を複雑にするだけです。一人一人が専門家意識を持ちながら、チームプレー営業をしています。
会社は舞台・劇場を提供し、社員一人一人が、演目を企画し、演じ、お客を集めて興行収入を得る主役です。
こだわりの旅行を提供していくのに、20人という規模はちょうどいいと思っています。
2009年東京都からワークライフバランス企業に認定されましたが、どういう取り組みが認定対象になったのでしょうか?
ワークライフバランスとは、直訳すると仕事と生活の調和で、働きながら私生活も充実させられるように職場や社会環境を整えることをさします。1990年代に欧米で使われ始めた概念で、仕事と生活をうまく両立できれば、従業員の能力を引き出すことができ、従業員や企業にとって有益であるとの発想が根底にあります。当社は長時間労働削減への取り組みで認定されました。旅行業は、繁忙期にはツアーが集中し多忙を極める仕事です。社長になって経験した激務による社員の退社を教訓として改善した結果で、特別なことはしていません。
取り組みとしては
@ 時間外労働時間のOA集計とネット上での公表
A 有給休暇、振替休暇、休日出勤、出張、添乗、夏休みなどの出退勤状況の公開
があり、月一、労働環境改善などをメインテーマにした労使協議会を開催しています。活動の効果としては、業務量が見える化し、電子化されたことでデータ・エラーが激減しました。加えて残業も減少し生産性が向上しました。
その結果、社員はプライベートな時間ができ、趣味や勉強の時間を持てるようになりました。旅行業は夢と感動をつくる仕事です。ゆとりの時間ができることで仕事の幅も広がっていくことが期待されます。
これからの市原さんの向かう道は?
旅に求めるお客様の思いも、どんどん変化していくことでしょう。また、社員の働き方も変化していくと思います。そうした変化に対応できる力を柔軟に持ち育てていくことが求められると思います。
当社の理念でもありますが、旅行を通じ、平和、環境保護、人権福祉事業を応援し、人と人との新しいネットワークづくりをしていきます。旅は平和で豊かで文化的社会を育みます。富士国際旅行社は、そんな旅づくりのお手伝いをしていきたいと思っています。
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