2005年に音声収録スタジオを開業されましたね。
毎晩毎晩、目黒で皆と飲みながらですが、まじめに経営について議論していました。妻にしてみれば「私に仕事を押し付けて毎晩飲み歩いて・・・」と思っていたようです。そのストレスと仕事が忙しかったことも重なって、妻は蚊文症や喘息を発症してしまいました。そこで中目黒から離れた都心へ引越をしました。おかげで、夜の飲み会はなくなり、たまたま皇居が近かったので頭がよくなるというジョギングを始めました。また、妻の体調も考え、多忙を極める着メロから撤退し、麹町に音声収録スタジオを開業し、美術館、博物館のオーディオガイドや洋画の日本語吹き替えの収録などを始めました。
新しい事業に取り組まれているそうですが。どのようなことでしょうか?
男に幸せという言葉は似合いません。しいて言うならば充実した人生を送っているかということです。それはお金(仕事)だけでもない、打ち込める趣味と家族、そのバランスが一番大事だと思います。儲かって、いけいけどんどんの時代もありましたが・・・
リーマンショック以降仕事も激減したこともあり、更に先ほどの幸せ、つまり充実と言うことを考えると下請けを脱却して、独立自立型企業にならなければいけないと痛感しました。幸い私にはスタジオがある。スタジオを使って一番リスクの少ないものとしてオーディオブックでドラマなどを制作し、配信する事業をしていきたいと考えました。そこで、sound mind(サウンドマインド)というレーベルをつくりました。この理念は、「後世に残すべき、心が豊かになる貴重な音声を、時代に適合したメディアで提供していく」ということです。
第一弾として「江守徹の声で聴く、腹にずしん!とくる名言365」を2011年6月25日に発売しました。ぜひ演劇界の重鎮である江守さんにお願いしたいとは思いましたが、つてもなくどうしようかと思案していました。しかし、名言集の言葉が体に入って力が湧き、その勢いで思い切って江守さんの事務所に電話をしました。初めて打ち合わせに行ったのが、3月11日の午前中でした。午後にあの大震災です。もうダメだなと思いましたが、数日後「やりましょう」という連絡をいただきました。嬉しかったですねえ。この名言集が、皆様のなにがしらのお力になればと心から思っています。
収録した時は感動しました。やっぱり江守さんの声は素晴らしい。なかでもとても気に入っている言葉があります。プラトンの言葉ですが、「親切にしなさい。あなたが会う人は、みんな厳しい闘いをしているのだから」幸せそうな顔をしていても、見えないところで皆苦労しているのが普通だなと思いました。自分の事ですけど。(笑)
オーディオブックの次の企画は、「日本でいちばん大切にしたい会社」の著者である、法政大の坂本光司先生にお願いしています。私は坂本先生をとても尊敬していて、公開講座によく参加しています。同時に価格を抑えた「sound times」というレーベルで坂本先生と大学院生の研究発表を毎月シリーズでやっていこうと準備しています。
もう一つ、鎌田弥恵さんに金子みすずさんの詩などの朗読をお願いしています。鎌田さんは、かつて女風呂を空にしたと言われた伝説のラジオドラマ「君の名は」のナレーションを担当し、一世を風靡した人です。83歳になられた今も現役で「語り」の仕事をされています。今後も後世に残すべき、心が豊かになる貴重な音声を数多く出していこうと考えています。
藤原さんは「マラソン」に打ち込んでいらっしゃるそうですが?
近くに皇居があったのが、ジョギングを始めたきっかけです。しばらくして一生に一度くらいは42.195キロを走ってみようという気持ちになり、6時間でいいから完走する方法を教えてもらおうと、マラソン塾に入り基礎知識を学びました。マラソンは偶然性が少なく科学的に答えが出やすい、どれだけ練習すればどうなるという必然性の高いスポーツです。マラソンに関しての本も大量に読みました。結果48歳でサブスリーを達成し、全国の同年齢で69位に入りました。2010年は63位でした。今も朝4時に起き、5時から22キロ走っています。土日は32キロ走ります。スピード練習も、はきそうになりながらがんばっています。週5日走り、2日休みます。それには「超回復」という意味があります。中に休憩を入れると、筋肉を傷めることなく、10ある力が11になるということです。
苦しい練習をどうして続けられるのですか?
走った後の爽快感ですね。ある一定距離を走ると脳にベータ・エンドルフィンという快楽物質が出て、いくらでも走れる気分になる時があります。それが「ランナーズハイ」という状態です。続けられる人はその快楽物質の量が多いのではないでしょうか。フルマラソンは自分の場合、時速約15kmで走りきります。35キロの壁というのがあります。筋肉の中に蓄えられたグリコーゲンを使い切った時点です。その後は脂肪をエネルギーに変えていくので、変換に時間がかかりつらくなります。今年の秋にはつくばマラソンに出場する予定です。
これからの夢は?
7月28日、創業15年目に入りました。なんとか踏ん張っている状態ですが。今回の企画も作家の方と雑談しているときに生まれました。自分自身にはなんの才能もないので、社長をやり続けるしかありません。今後もいろいろな方の知恵をお借りして、世の中に役立つ作品を作り続けたいと思っています。
|