◆それは素敵なサービスですね。事業はそのころから順風満帆だったのですね。
いやいや、そうでもありませんよ。
一業危うし、一社危うし、一品危うし・・・って言いますね。
某大手流通企業さんとのつながりも、私が始めて勤めた会社で一緒だった先輩と何年かぶりで偶然出会い名刺を交換した事がきっかけでした。その会社とのお取引は一昨年の春まで続きました。ある時期には月商の60%を占めるまでになり一社依存体質の危機を感じましたので5年ほど前に『脱、大手流通企業依存体質』を掲げました。少しずつ営業シフトを替え中堅企業に営業のターゲットを絞りながら、嘗て私がこの業界に引きずり込んだ同業の古い友人が経営していた会社を吸収し僅かながら顧客を瞬間的に増やす事が出来ました。 この事が後に大きく会社の危機を救う事になりました。
昔は人と人との信頼関係が企業のつながりになっていきましたが、今はかなり難しいです。仕方が有りませんね、大企業も統合・倒産する時代なのですから。時代の要請で経済原理が変り仕方の無い事かも知れませんが、心配していた価格競争の渦の中に巻き込まれ年間九千万円弱の売り上げが飛んでしまいました。それに前後して社員が8人も相次いで辞めて行きました。内心見切りを付けられたのかも知れません。危機的状況が重なってしまったのです。
然し、驚いた事が結果として現れました。その年の決算がなんと減収増益になったのです。
友人の会社を吸収した事が増益に貢献してくれたのです。 (今、その友人には我社の若手に技術的な指導をしてもらっています。)大企業は乾いた雑巾を絞るように中小企業を締め付けていることを実感しましたね。 大手企業とつながっていることはステータスではない時代になっていると思います。
時代は大きく変わりました。
◆では、ステータスとはなんでしょう?
それは、自社ブランドを持っているということだと思います。 当社のブランドとは、誠意のあるきちんとしたアフターフォローです。
◆なるほど、では植松さんにとっての会社とは?
私にとっては自分が生きていくための手段でしたが、社員の人達に対しては仕事の場を提供することで、一人一人の自己実現をしていってほしい。若い人達にその場所を提供していきたいと願っています。会社は私だけのものではないと思うのですよ。
◆裸一貫で作り上げた会社を、ご自分だけのものではないと言い切れるには、何かきっかけがあったのでしょうか?
4年前に、心臓の手術をしました。福島の病院で一ヶ月1人になって、自分を見つめる時間ができたのです。
4歳まで幸せに暮らした内モンゴルは私の心の故郷です。私の原点はそこにあると感じました。そこから今まで、本当に多くの人々に支えられてやってこられたことを、心の奥深いところで感謝しました。
自社ビルを建てたり、沢山の物を持つ事がステータスとは言えないと、思えるのです。恥ずかしい話ですが六十歳近くなって人生の目標と目的とは違う事に気づいたのです。人生の目的の達成のための手段の一つとして仕事があるんだってね。
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