【桜井】御社の事業についてお話ください。
業種はコンピュータソフトウエア業ですが、歯科医院にむけてのシステムの開発とサポートをしてきました。パッケージソフトの制作販売ではなく、歯科業界の中にどっぷりとはまり込んで、歯医者さんの経営を支援し、経営向上のためにソフトウエアを活用して、ノウハウを提供し、ツールも開発して最終的には歯科医院のお客様である患者さんのための歯科医院作りをしていくことを目指しています。それは、医療の主人公である患者さんにきちんと情報を提供して、健康になるように働きかけをするのが医療機関の役割であるという切り口から、「コミュニケーション」をテーマに、患者向けのパンフレットなどのツールづくりやリコールという働きかけなど、さまざまなアプローチをするところまでお手伝いをすることで医院経営の向上に生かしていただきたいと考えています。これまで21年間で約1600の歯科医院さんをサポートしてきました。
みなさんは歯医者さんは虫歯を治すところだと思っています。しかし患者さんからすると、虫歯になりたくない、痛くなりたくない、健康になりたいと願っています。ですから、歯科医院あるいは医療というのは、本来は病気にならないようにするのが一番の役目ではないでしょうか。そのために患者の立場である我々は、歯科医院に対して何か提案できることはないだろうかと考え、「予防中心の歯科医院を作りましょう。火事になってから火を消す役割ではなくて、火を出さないようにしましょう。そういうところに特化すれば、患者さんは痛くないし、きれいになるし、笑顔になれますから、健康な『お客様』がたくさんいらっしゃるようになるでしょう」との提案をしてきました。
1970年代にたくさんの歯医者さんが生まれ、歯科のある大学が17校から29校にまで増えたことで、歯科医院の数は全国で6万8千医院となり、これはコンビニエンスストア4万に郵便局2万をたした以上の数になります。その先生方は今までの教育の中で、歯を削ったり、つめたり、抜いたりと痛い仕事ばっかり勉強していきました。しかし、予防意識の向上と少子化でむし歯の患者はどんどん減っていきます。医療界全体で32兆円市場ですが、歯科業界は2兆8千億円で減少傾向にあります。歯科医院はその中で毎年1500ずつ増えていますから、もう『治療型』の歯科医院の経営は頭打ちです。昨年ある雑誌に「歯科医師5人に1人はワーキングプア」とまで書かれています。どうやって生き残っていくか、とても厳しい現実があります。
◆歯科医院も治療から予防へ視野を広げなければいけませんね。
減ってゆくパイの奪い合いをする「レッドオーシャン」(血の海)ではなく、新しいパイ、市場をつくる「ブルーオシャン」への発想の転換がせまられています。患者さんをむし歯にしないこと、もっときれいにすること、また口と全身の健康はつながっていることなどを視野にいれて、全身の健康のために口をきれいにしましょうという働きかけができるような歯科医院を育てていくことが大切だと考えます。「口は健康の入り口」です。歯が1本でも無くなると体のバランスが崩れるし、入れ歯ひとつで肩こりが起こったり治ったり、胃腸の状態にも関係してきます。また、歯周病を持っていると、脳梗塞・心筋梗塞になりやすいとも言われています。定期的な検診の必要性を患者の皆さんに浸透させていくことも大切です。患者さんや歯科医院さんが笑顔になれるようなサポートをしていくことがコムネットの仕事です。
◆コムネットさんは、会員の歯科医院さんにむけてニューズレターを発行されていらっしゃるそうですが?
実は私は会社に入る前から、コムネットの会員歯科医院向けにニューズレターのライターをしていました。「Together」というニューズレターになって、2008年で10年目を迎えます。「Together」の中に全国の歯科医院さんを尋ねてインタビューするページがあるのですが、今でもこのインタビューは私が担当して150回を超しました。全国を飛び回って取材をするのは私の楽しみの一つでもあります。 この「Together」にこめた思いがあります。それは、J.F.ケネディの1961年1月の大統領就任演説を原典にしています。最も有名な一節は以下のフレーズです。
And so, my fellow Americans: ask not what your country can do for you -- ask what you can do for your country.
My fellow citizens of the world: ask not what America will do for you, but what together we can do for the freedom of man.
(だからアメリカの同胞のみなさん、国家がみなさんに何をなしうるかを問うのではなく、みなさんが国家に何をなしうるかを尋ねてください。
世界中の同胞のみなさん、アメリカがみなさんに何をなしうるかを問うのではなく、われわれがともに人類のために何をなしうるかを尋ねてください)
患者さんや地域の生活者の方々の笑顔と健康、そして幸せのために、歯科医院さん、そして当社のなしうることは無限にあると思っています。Together. Let us begin! です。
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