【桜井】片桐さんは、広告デザイン・パッケージデザイン等デザイン業界で華々しい受賞暦をお持ちですが、初めての受賞は、1973年の朝日広告賞/一般部門グランプリ受賞ですね。
はい、アートディレクターとコピーライターの大先輩のおかげです。僕は先輩の指示通りにデザインしただけなのですよ。(笑)その作品は、新聞広告一面サイズの大手百貨店のものでした。コピーライターの方が温かい生活観のにじみ出るような素晴らしいコピーを作られました。
先輩がその経歴を持ってここにいきなさいといってくれたのが、日本デザインセンターです。試験と社長面接がありましたが、即日入社決定でした。総務の人が、一枚の用紙を出して、希望の給与を記入するようにといったので、(当時月50,000円で結構生活は厳しかった)ではといって書いたのが、55,000円。(笑)
◆なんと謙虚なことで!
ほんとうですね。(笑)当時のデザイナーって薄給でした。だから先輩がアルバイトを紹介してくれました。この日本デザインセンターには、日本のデザイン業界の草分け的存在の方々がたくさんいらっしゃいました。私たちはそこで高度なスキルを学んでいったのです。
◆1974年から、朝日広告賞/広告主部門賞、日経広告賞/部門賞・・・と相次いで受賞されていますね。
はい、でも僕だけの力ではありませんよ。アートディレクター(AD)、コピーライター(C)、そしてデザイナー(D)のチームワークの結果です。 デザイナーという仕事は、殆どが一匹狼です。でも、僕は一人よりチームの力を発揮することで、より大きな仕事ができると思っています。それで、1978年に株式会社タックルデザインルームを設立しました。
◆社名のタックルとは?
「複合滑車」という意味です。ひとつひとつの滑車は小さくても、複合することで、大きな力を発揮できます。私の会社も、多様なデザインワークにこたえられることを目標にしました。
ただ、タックルというと、ラグビーのあのタックルをイメージされることが多くて・・・。(笑)その後、1989年に株式会社ベーシッククリエイティブに社名変更しました。
◆1984年、視覚サーカスで優秀賞受賞とありますが?
「イリュージョンカップ」といいまして、カップアンドソーサーの鏡面加工をしたカップに男性を描いて、ソーサー上に丸々と太った女性を描き、ソーサーの上にカップを置くとカップ上でスリムな二人がキスをしているように見えるものなのです。頭の中の絵をデザインするのは、大変でしたが、楽しかったですよ。
今でもこういっただまし絵的な作品は好きです。(笑)この受賞を機に「ENGRAM」パズル、「グラフィックパズル」など「遊生活デザイン」をテーマに、デザイン資源の商品化を試みるようになりました。
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