◆ 会社の改革に取り組まれたのは?
東京中小企業家同友会では、いろいろな勉強会をやっていました。私は、それまで経営の勉強などまったくしていませんでしたから、進められるままに参加してみて、目からうろこが落ちる思いでした。「どんな会社にしたいのか」「やりたいことは何なのか」思いを明文化せよといわれて、初めて真剣に考えはじめました。 1992 年から経営計画書の作成を始めました。
誰もやめない会社って言うのは、居心地がいい。言い方を替えればぬるま湯状態です。年功序列で退職金は青天井!新しい人が入ってくる環境にする為にも、給与体系を変えていかなければなりませんでした。古くからいる人の既得権をどうするかなどいろいろな問題を組合ともよく話し合い、社員の気持ちも組みながら改革していきました。当社の仕事の中には手作業を必要とする部門もあります。そういう部門の場合、年功序列の賃金体系ではどうしても不公平が生まれてしまいます。そこでここは別会社にして、能力に応じた組織にしました。とにかく一つ解決すれば、また次の問題が出てきます。これで終わりっていうことはありませんね。
1991 年に東京の工場の機能を岩手県胆沢(いさわ)に移しました。 1998 年から岩手工場ではいち早く環境の ISO14001 、品質管理の ISO9000 シリーズを取得し、現在では全社取得しています。東京都 ISO14001 取得助成第一号にも選出されました。
◆インターネット事業に参入されたきっかけは?
インターネットに出会ったのは、 1994 年末でした。ある経営者の勉強会で、慶応大学の研究室の声かけで「サイバースペースに街をつくって、いろいろな実験をしないか」という話がありました。野村総研とかシンクタンクが大手企業を集めてインターネット上に街を作ろうとしていたのが 94 年末でしたら、殆ど同時でした。自分にはあまり関係ないかな、とも思いましたが、直感でかかわっておこうと思いました。数百社に声がけがあって、なんとプロジェクト参加の手を上げたのはわずか 7 社でした。すでに参加を決めていた会社 36 社と計 43 社で日本初の中堅企業のサイバースペースが始まりました。まずは、当社のホームページを立ち上げましが、見に来るのはうちの社員ばかり!という状態が続きました。(笑)
しばらくして、文房具店を経営している友人がネット上に店舗の PR ページを持ちました。
その友人から、「文房具屋はどうも先細りの業界なので、その原因を知りたい。その為にアンケートをとりたいから、アンケートシステムを作ってほしい」と依頼がありました。そこで、そのホームページにアクセスした人からアンケートをとり、メールアドレスを登録してもらいコミュニケーションができるシステムを作りました。この結果、数ヶ月で 2 万件ほどのデータがたまりました。そのデータから、お客様の文房具店に対する不満が明確に見えてきました。この調査結果に、ある大手文具メーカーの社長が大変興味を持ち、そこから、 PC 文化に対応したコンビニスタイルのレイアウトのしっかりした文房具店の発想が生まれ、新形態の文房具店のフランチャイズも始まりました。
ネットリサーチのシステムは、とても単純です。当社のサイトにアクセスしてきた方に ID とパスワードを発行してモニター会員登録をしてもらいます。クライアントさんは消費財メーカーから金融サービスまでさまざまです。モニター会員の方の個人情報を責任を持って取り扱うために、 2000 年に JISQ15001 (プライバシーマーク)を取得しました。現在では、モニター会員登録者は 17 万 5 千人になっています。
ISO やプライバシーマークは、いち早く取得することによって社内の品質管理や環境対策のシステムの整備や手順を確立することができ、個人情報の適切な取り扱いについてもシステムのスパイラルアップをしていくことができました。先手を打つことがなにより大切だと思います。
「情報エネルギーを通わせて、豊かさをクリエイトする」というのが当社の事業コンセプトです。世の中の変化に対して、会社も変化していかなければなりません。取り扱うものは変化する可能性はあっても、サービスの本質は変化しません。そういうことで、 1999 年「斉藤コード製造株式会社」より「インターワイヤード株式会社」に社名変更をいたしました。
◆では、会社は誰のためにあるとお考えですか?
社員が豊かに生活できるための自己実現の場が会社だと思っています。社員が豊かになるためにも、会社は業績を上げなくてはなりません。営業は、センサーになることだと先ほども申しましたが、世の中の動きにいち早く対応できる体制を取るためにも営業の役目は大切です。顧客は感謝に応じて代金を払ってくれます。売上げは顧客の感謝のバロメータなのです。
工場が分散していますので、サイト間のコミュニケーションが難しくなっています。そのためにもきめ細かい経営データの情報公開が必要だと思っています。
今全社員にヒアリングシートを配布し記入してもらっています。仕事は 1 人でできるものではありません。より気持ちよく能率的な仕事をする為に、自分も努力するけれど他人にもこうして欲しいということもありますよね。いいも悪いもすべて出してもらうことにしました。殆どが私に対しての希望、苦情?なのですが・・・。社員は結構言いたい放題書いてきますよ。 2 日間くらいはそのシートを見て「なに勝手なこと言ってるんだ!」って思いますが、 3 日目くらいに読み直してみると「やっぱりそうだよねぇ・・」と思ったりしてね。(笑)まずは社員たちが何を考えているかをきちんと知ることから、やっていこうと思っているところです。