社員の方に望むことは?
当社の事業は、モノをコトにしていく仕事だと思っています。単に薔薇の花を売るのではなく、薔薇の花を通して、お客様とお客様の感動作りのお手伝いをしているのです。私は社員が《思いやり》の中で失敗してもいいと思っています。優しさや情緒、それは息子が教えてくれた大切なものですから。
生きていくうえで、《決め方》だけは決めておく。何が大事なのかを決めておく。これだけは譲れないものを決めておくことです。私にとっては、数字よりも思いやり、そう決めています。でも数字は 14 年間きちんと付いてきていますよ。(笑)
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2004 年度は、従業員 15 名でなんと年間 5 億 5000 万円の売上の成長企業でいらっしゃいます。新規採用をされて、会社は変わりましたか?
優秀な社員が入った事で、先輩たちが頑張りだしました。中小企業は即戦力の中途採用が主流です。あえて新規採用を始めたのは、あの人材採用コンサル会社の「私は絶対にこの会社には入りたくない!」といった女性社員の言葉が発端でした。当時真剣に悩み続けました。それを見た〈藍塾〉の学生が、「長澤さん、今までいろいろな経営者にお話を聞いてきて、どうしてもわからないことがありました。それがいまやっと理解できました。」と言いました。それは、「部下を育てて二流、部下に教わって一流」という言葉だそうです。彼いわく「長澤さんは大学出たての若い女性に言われたことで、そこまで真剣に悩むなんて・・・」と。
新卒を採用していくことは、彼らの人生に責任を持つことです。当社を選んでくれた彼らの将来に責任を持って、入ってよかったと言ってもらえる会社にしていかなければいけないと、自分に課しています。
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長澤社長のお心の広さだと思います。誰に対しても目線を同じくできる人が一流ということですね。尊敬する人はいらっしゃいますか?
倉本聡さんが好きですね。若い人をひきつける魅力ある中高年の代表です。私もそうありたいと思っています。(笑)
そうなりたいというのは、なかなか難しい。それで私は、「こうはなりたくない親父」というのも作っています。こんな人にはなりたくない!というほうが簡単ですよ。(笑)おかげで、1日 50 本のヘビースモーカーが1日でやめることができました。
大好きな人に越川禮子さんがいます。「江戸の繁盛しぐさ」の著者です。
越川さんは「江戸講」の最後の講師、芝三光さんから受け継いだ「江戸しぐさ」を伝えることを使命として活躍されています。 江戸の往来しぐさの「傘かしげ」や「こぶし腰浮かせ」「うかつあやまり」などなど、思いやりの心が、江戸っ子には自然と備わる土壌があったのですね。私は、江戸しぐさが浸透すれば、世の中から争いが消えると思います。江戸には庶民の高い文化があったのですね。当社の新入社員教育の教科書にしています。「うかつあやまり」ってご存知ですか?満員電車で時々足を踏まれたことってあるでしょう。そういうときに踏まれたほうは、睨み付けたいですよね。江戸っ子はね、踏んだほうは「すいません」踏まれたほうも「こちらこそ、うかつでした」いいですね、この思いやり、喧嘩なんかには絶対ならない。(笑)
うちの社員にも、そういう思いやりをいつももっていてほしいと願っています。 |