◆このお仕事を選ばれた理由は?
友人に高級料理店の板前がいまして、その人からのアドバイスだったのですよ。彼は「東京から富山に来る人はみんな『おいしいお酒とおいしい魚とおいしいお米』を楽しみにしている。だから、その全部をあわせた、富山湾の魚の粕漬けを作ったらいい」それじゃあといって、妻と二人で魚の粕漬け・味噌漬けの製造を始めました。ところが、ぜんぜん売れませんでした。(苦笑)おいしいものを組み合わせたからといって、東京のお客様の口には合わなかったのです。何しろ市場調査も何もしていなくて、ただただ想いだけで作ってしまったようなものでした。必死で東京への営業活動を始めました。夜行バスで朝から夕方まで営業してその夜のバスに乗り、朝富山についてから工場で魚をさばいて・・・という生活が続きました。幸い前社からお付き合いいただいていた仕事仲間が市場への窓口を開いてくれました。デパートやたまプラーザのストアーなどでもずいぶんと売っていただきました。
◆起業後のご苦労は?
富山湾で獲れる魚は、高級魚です。おいしくても高い。これではなかなか一般家庭の夕食に上ることは難しいのです。そこで魚は天然ものにかぎるが富山湾でというこだわりを捨て、販路を生協に求め、安全で手ごろな価格で提供できる製品作りをすることにしました。なぜ生協かというと、生協は、子どもたちに安全な食べ物を安心して食べさせたいというお母さんたちの気持ちを反映したコンセプトを持っているからです。
当社のこだわりとしましては、養殖ものは使いません。刺身で食べるには天然もののほうが脂がさっぱりとしていておいしいですが、味付けする魚には、養殖もののこってりとした脂のほうがおいしく感じられるのです。しかし養殖ものには私はかなり不安を感じています。ですから天然ものしか使いません。「食」を扱うものとして、何処で線を引くかは非常に難しい問題です。私は、「食は安全が一番」というポリシーを大切にしております。天然ものの魚と、味付けにつかう味噌・酒粕は富山産と質にこだわっています。「富山のおいしいお米とおいしいお酒」です。
当社はこのような経営理念を持っております。 |
1, |
お魚の加工品を通して「お客様の幸せ創造」のお手伝いをします。
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2, |
従業員がとと屋に勤めてよかったと実感できる会社を作ります。
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3, |
地球環境に配慮した生産活動をします。 |
◆何をどう作るか、それが社長のこだわりですね。
会社とは?と考えられたきっかけは?
3年前に足を骨折して3ヶ月入院しました。その時に会社は自分の想いと違う次元で動いているということに気づきました。自分がそこにいなくても、誰かがそこで一生懸命働いていて、会社が動いている。はっとさせられましたね。私は何のために経営しているのだろうか?会社は何のためにあるのだろうか?ということをじっくりと考える貴重な時間となりました。
社長が考えるいい会社と、社員が考えるいい会社とは違います。ともすれば社長の押し付けになってしまったり、自己満足になってしまったり、そうではいけないということに気づいたのです。社員が働きやすい環境を作ること、従業員のやる気を引き出すこと、それが社長の仕事だと気づきました。