◆社員教育についてお伺いします
社員教育の原点は、お菓子屋時代の買い物計算テストです。中学校を出たばかりで、計算もできない子もいました。でも商売の基本はお金の計算です。毎朝朝礼の時に、店則を唱えたあと、簡単な計算テストをやりはじめました。学校のテストのように、正解には赤丸をつけてあげるんです。簡単な問題だから、みんなすぐに100点が取れて、そうしたらみんな嬉しがって、目がきらきらと輝くんです。自信ができて、猛烈にやる気を起こしました。指導のコツは一つだけ。絶対に100点を取らせること。自信を持たせることの大切さを感じました。この「100点成功主義」がその後の文化堂のOJT教育の原点となりました。
現在の新入社員教育は、実技と知識の習得に半年、あとの半年は習得した技術・知識を反復しつつ確認する作業にあて、1年かけてやっています。
昭和56年、文化堂は36名という新卒社員を採用しました。この時期は、第二次オイルショックの影響による不景気で、買い手市場となったため、全力を傾けた求人活動が功を奏して多くの新卒社員が集まりました。その年の入社式は、新入社員の父兄、店長、バイヤー、係長、そして新入社員と今までに無い大規模な式典となりました。私はその入社式でみんなの前に立ったとき、緊張で足が震えました。高校・大学まで出して大切に育てた子どもに夢を託して、この文化堂に預けてくれた父兄の胸のうちを考えると「ただ商売が好きなだけではやっていられない」と、社会的に重大な責任を負わされていることを痛切に感じたのです。そこで従業員の育成を最重点にすることを目標におき、無我夢中の思いで頑張りました。今考えると、この時考えたこと、実践したことが、現在の人材教育の基礎になっています。
人育てには、時間とお金が必要です。私がお店をどんどん出店していったのは、人育てをしたかったからです。繁盛する店もあるが、どうやってもなかなか売上の上がらない店もあります。そういったところをたくさん経験させることで、人は育っていくものです。
◆社長交代はどのようにすすめられたのでしょうか?
文化堂は、今年で創業55年、会社設立40年となりますが、 文化堂は、今年で創業55年、会社設立40年となりますが、 平成14年、創業50年の節目を前にして、花岡新社長を中心に新しい文化堂がスタートしました。私が社長交代を決断したのはその5年前で、役員たちとともに静かに着々とすすめていきました。新社長誕生と同時に、私は会長にそして専務の弟は副会長となり、社長のサポート役に回りました。この社長交代の発表は、役員以外にとっては青天の霹靂だったようで、社員はびっくりしていました。でも、若い人は大きな期待を持ったと思いますよ。この社長交代は、ゆるやかなバトンタッチという感じでしょうか。社長の花岡は、堅実経営を身上とする人物ですから、いきなり自分を出さずに、ゆるやかにシフトして、その中でしっかりとしたビジョンを描いてくれています。社長が営業を強化して、私がバックアップするわけですから、取引先にはかえって安心されました。より会社が強くなったと、評価をいただいています。現在はかなり新社長のカラーが出てきていると思います。
◆夢は何でしょうか?
皆が遊んでいる時代に、しゃにむに働けばすぐ前に出られます。だから、文化堂の求人に来る人たちには、「中小企業にきたら、独立しなさい。それくらいの人は、みんな会社の役に立ってくれています。結局一番得をするのはあなたですよ。独立するくらいの気持ちでやりなさい」といっています。現在、文化堂のグループ会社には、不動産、包装・配送、人材派遣、カラオケ5店舗、FCなどがあります。全て黒字です。私の夢は、文化堂グループに社長会を作ることなのです。
去年の12月の初めに半月間バカンスをとって、アメリカ旅行に行ってきました。12月の一番忙しい時に留守をしたわけですが、これも私がいなくて結果をだせる良いチャンスとしてほしかったのです。私がいても平気、いなくても平気という会社にどうやって作っていくかを考えながらやっているところです。
私が女性で、社長が男性、戦わなくてすむのです。ところが父と息子となるとそうはいきません。もし父が息子を認めるときが来るとすると、体力が息子にかなわないと思う時と、息子が成長してなかなかやるなぁ、任せたほうがいいかな・・・と思わせることができた時ですね。人間力を相当磨かなければいけないでしょうね。
中小企業が戦う相手は、社内ではありません。社外にライバルを作ることです。あの会社には絶対に負けないという会社を作ることです。社内は1つの目的に向かってすすむ仲間です。そういう社風をつくることも大切ではないかと思います。
商売人は農耕民族のようなものです。毎日耕して、毎日水をやって、手入れをして、お客様に収穫してもらうのが商売です。そのためには「正直商売」以外なにもないと思っています。真面目に働いていることを認めてもらう、それが文化堂の暖簾を守っていくことだと考えています。
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