◆ではどのようなお仕事を?
取りあえず、生活のためと、教材販売のセールスの世界に入りました。当時豊田商事の事件などもあり、簡単な仕事ではありませんでした。成績もなかなか伸びませんでしたが、誠心誠意良いものを人に紹介するという熱意が通じて、高額商品もよく買ってもらえました。
そんな私の仕事振りを見ていてくれたのでしょうか、その教材販売を経営する会社の社長が、奥さんの貿易の仕事を利用して石材の輸入の仕事と中古トラクターなどの輸出業に重点を置きたいから、そちらの仕事をやらないかと言ってくれました。これが我が人生のターニングポイントとなりました。
今までの仕事では『井の中の蛙』世間を知らない、考えが狭いと自分でもめげていたところだったので、この仕事なら外国を見て自分の幅を広げることができる、と一も二も無く承諾しました。13年間の貿易業務の中では東南アジア、またアメリカやヨーロッパそしてオーストラリアやニュージーランドの人たちとの接触もありグローバルな考え方が身に付きました。また、教材販売の仕事をやりだした頃から、趣味と実益を兼ねて始めたコンピュータがいよいよWindowsの時代を迎えインターネットの時代が到来したのです。
◆起業のきっかけは?
私は、若い頃からは小さな会社の番頭役を務め、独立して商売をするようなことは全く考えておりませんでしたが、47歳を迎えた1999年、『自分で何かをやらないと。いつまでも社員で頑張っても老後も不安。仕事をやりながらでは何も思い浮かばない』とその会社を辞めました。半年間考えたあげく、これからはアウトソーシングの時代ではないかと考えました。起業するまえに、今の企業は事務の要素をどう考えているのか、昔のような事務の達人的女性事務員さんがはたしているのだろうか、と疑問に思うことを調べました。
幸い、私の妻は経理畑で仕事をしてきたので、経理の受託業ができます。また、私はコンピュータの多少の知識もありメンテナンスなどができます。企業はオフコンからパソコンへ変わると実感していましたから、当然オフィス業務もコンピュータ化が進み、コンピュータという箱の中に入った帳簿の形態は、訳のわからない状態で業務が進み、出てくる結果はグシャグシャ!業務の効率は最悪の様相を見ることになるだろうと予測しました。
このような予測から、将来的に必要とすることは基本的な業務の流れと自社の業務の流れを把握して、それに対する抜本的且つ的確な対策をとれる指導体制が必要だと考えました。そのためのオフィス業務代行業がこれから絶対に必要だと思ったのです。
◆社名「アヴァカス」の由来は?
アヴァカスはAbacusから来ていますが、ほんとうはアバカスとなるはずのものを字画の関係と他の会社名にあるから変えました。
Abacusとは英語(元はギリシャ語)でそろばんです。ソロバンというと日本か中国のものと思われるでしょうが、ギリシャで石版に溝を掘って小石を転がして計算したのが由来だそうです。
私たち企業が必ず行うのが帳簿での管理ですがこの帳簿には古くから必ずソロバンが使われてきました。先に「コンピュータ化が進み訳のわからない状態」と述べましたが、ソロバンは記帳の必須アイテムとして使われてきました。そのソロバンが基本のものとして「基本を決して忘れてはならない、初心を忘れてはならない」との思いで名付けました。
◆会社を作られてからはいかがでしたか?
いくら偉そうなことを考えても、所詮ゼロからの出発、いやマイナスからの出発で妻と二人で自宅を事務所として起業をしたものの、最初の2年はどうなることか全く予想がつかない苦しい状態が続きました。何せ得意先はゼロですからDMで得意先の獲得を狙うしかありません。
挨拶文から自分たちで出来る仕事の詳細を書いて電話帳で住所を確認しデータ入力して封入し、週に500通ぐらいをめどに郵便局から料金別納で出していました。
その後から送った先に「DMを送らせて頂きましたがご覧いただきましたでしょうか」と電話をすると、ある方は「経理を外に出すなんて、京都でそんな事をする会社があるかいな」と冷たい言葉や、「届いた住所は間違っているで」と言われたり。(苦笑)何故間違っている住所で届くんかと、疑問に思いながら電話帳の住所を確認すると間違いはなかったとか。
ところが、DMを送った先から「お宅のDM見て一度話が聞きたい」と電話があって早速アポイントを取ってお伺いして、すぐに契約が出来るかと思っていたがそれも見方が甘く、業務の性格上、開始する時期も考慮に入れる必要があることに気づいていなかったのです。(笑)それでも次第にお得意先の獲得もでき、お得意先がまたお得意先を紹介して頂けるように広がっていきました。