◆紀洋建設さんは、大手ハウスメーカーの「顧客満足コンテスト」で全国一位になった工務店さんでいらっしゃいますね。 職人の技術の研鑽をしてきたことが、結果としてそのような評価をいただくことができたのではないでしょうか。また、住宅づくりというのは、お客様の財産をつくる仕事です。職人には、常にお客様の目を見て、お客様が不安にならないような対応をするように心掛けるようにと強く言っています。「お客様に心配をかけない」これが建築業のおもてなしの心だと考えます。8年前にその元受会社から、下請けの会の会長を頼まれました。その年の安全大会は、それまでとは違った記念講演を企画しました。建築業にとって安全を考えることは至極当然のことで、これらは一歩進んでお客様に心から満足していただけるために、建築業もおもてなしの心を学ぶことが大切だと考えました。日本秘湯を守る会の会長、二岐温泉大丸あすなる荘社長に、旅館業界のおもてなしの心についてお話いただきました。これを機会に、他業種に学ぶという方向性ができました。建築業はクレーム産業です。ですからお客様に余計な心配をかけないようすることが大切です。当社のような地方の会社では、特にそれが大切だと感じています。
◆最近は古民家再生に力を入れておられるようですが。 古民家は福島県にも未だ結構あるのですが、そこで再生しようという人は殆どいません。たまたま長男が役場に勤めていたり、郵便局につとめたりしていて、収入があるところですと再生事業もできるのですが、数千万円の世界になってしまいますから地元で農家だけをしているところではとても再生ができません。
そのような中で、古民家をもう一度世の中に戻してあげたいと言う思いが強くなりました。古民家には、長い歳月を耐え抜いた風格、そして昔の人たちの丁寧な暮らしの歴史があります。しかし、いかに魅力的であっても、昔のままの形では現代には住むことができません。 暗い、不便、不清潔になりがちなのがかつての民家だからです。古民家は、土台まわりが腐っていたり、冬はとても寒いので、殆ど壊して新しい家にしてしまいます。それは本当にもったいないので、どうにか生かしたいと思いました。
私は、失われていく古民家に3つのもったいないを感じました。
● 日本伝統民家「古民家」を壊してしまうこと。
● 地元産の松や杉やけやきの材「古材」がなくなること。
● 日本の住文化「広い部屋空間」「建具での間仕切空間」「多用途な空間」が消えていくこと。
◆古民家再生に先ほどの高断熱高気密工法が役立つわけですね。 高断熱高気密工法は、難しい技術ではないのですが、古民家など昔の家は複雑に木組みのされている建築物を断熱化住宅にかえるというのは大変手間のかかる仕事です。この手間のかかる仕事を丁寧に仕上げることができるのが、当社の強みともいえます。
古民家の難しいところは、内部結露をさせないことです。目に見えないところで家が汗をかいてそれが水になります。それがカビや腐りの原因となります。ですから結露しないように、シート張りをするという技術を要求されるのです。ただ張るのでは気密が保てませんので、これにはかなりの技術と知恵が必要です。そこだけは私がやって、職人にお手本を見せています。実際に見て覚えるしかありません。現在職人は9人ほどいますが、半分くらいは一人でできます。全員ができるような力を持たせるのがこれからの課題の一つともいえます。
◆古民家の再生はどのようにされるのでしょうか? まずは、基礎の再生です。古民家は、土台がありません。土の上に石だけの束立て組みです。ただ上に乗っていて、家の重さで固定させていただけのものです。ですから直下型の地震があるともろいわけです。木造住宅が地震に弱いと言うことではなくて、その時代の工法に問題があるわけです。古民家は足回りだけが弱く、上家そのもの価値のある建物です。それで、再生してこれから100年、200年住み続けられる家にするために、一度家を曳き上げて基礎づくりをします。現代の技術で基礎をつくり土台を引いて、その上に柱を乗せます。今の日本の住宅は、30年くらいで飽きて壊す家作りです。しかし私が提案する古民家は、20年ほど住んで転売した時に付加価値がつくことです。100年で育った木は、倍生きます。手入れさえすればもっと生きるのです。日本の財産としてもっと大切に生かしていかなければと思っています。
|