◆古民家再生に情熱を燃やすきっかけとは? ある時、築120年の建物に出合いました。そのお客様はもうこういう家はいやだといいました。住んでいる人は皆さんそういいます。再生できますとお伝えしても、それよりは立て替えて、近代的な家にしたほうがいいと思うわけです。私はその古材がどうしても焼却処分するのは忍びなく、いつかは移築再生したいと無料で解体をさせてもらいました。移築再生は実現しませんでしたが、その古材を新築家屋に利用したら、若いお客さんに大変好評を得ました。今はこういった貴重な古材の再利用を新築にも加味した家づくりも提案しています。
◆具体的に快適古民家に再生された家はありますか? はい、おばあちゃんとご夫婦の3人暮らしの600坪の敷地に70坪の築70年の伝統ある民家でした。建て替えということで話が進で行ったのですが、ご主人がぽつりと「もったいないなぁ・・・」とつぶやきました。私は「そうか、もしかしたら残したいのかもしれない」と感じて、再生して残すことを提案しました。おばあちゃんの人生を見守ってきたその家をどうにか再生したかったのです。その結果、再生することになりました。
工程はというと、まずは瓦を剥がし、家屋を一旦曳き上げて腐りかけた土台を総入れ替えしました。この瓦は再利用します。次に、土間防湿シートを全面に敷き、べた基礎工事まで一気に施工しました。これで土台は腐らなくなり、地震にも強くなります。間取りは基本的に変えず、軸組みはそっくりそのまま残し、傷んだ木材を取り替え、耐震補強をしました。断熱・気密工事は、床に高性能グラスウールを敷きこみました。これで床下からの隙間風がはいらなくなります。天井はグラスウールの吹き込み、屋根の勾配部分にも断熱材を張り、古民家の象徴である太い丸太の小屋根組みを見せることができました。壁は土壁で4寸柱の間にしっかりと込められていましたので、これなら壁内に気流が走り結露することもないと判断して、土壁を残し外側からグラスウールボードで断熱しました。燃えない断熱材を壁に貼ることで、外からの火災を防ぐ効果ができました。窓は断熱サッシ&ペア硝子に総入れ替えしました。今では、冬でも暖房が要らないほど暖かい家になりました。おばあちゃんは、「昔は寒くて人が綿入れを着たもんだが、今は家が綿入れを着るんだもんない。暖かいわけだわ」といって、とても喜んでくれました。
家にはその家族の大切は歴史が詰まっています。古民家再生は、ただ家を再生することだけではなく、そこに住む人々の歴史も大切に残していくことなのだと改めて気づきました
◆2007年に快適古民家再生協会を発足されましたが、その目的とは? 改修費用が数千万円かかり、新築とあまり変わりません。ですからあまり需要は見込めないのではと憂慮しました。そこで注目したのが、国土交通省が進めている「二地域居住構想」です。2007年から始まった「団塊の世代」の大量定年(約700万人)とその潜在的な需要は大きく、福島県では首都圏から近いという利便性もあり、首都圏に向けて二地域居住の提案に力を入れています。そこで、NPO法人スローライフふくしま、NPO法人ふるさとネットワーク福島の協力を得て、「 快適古民家再生協会」を福島・宮城・山形の業者12社で発足しました。私たちは、断熱改修技術を生かし、この技術を東北地方に伝え広め、都会の皆さんに四季を通して田舎暮らしを満喫していただける場となり、貴重な財産である古民家を快適に過ごせる省エネルギー古民家として次世代へと残して行きたいと思っています。現在、毎月東京と福島で、古民家のオーナーと古民家に住みたい都市生活者の皆様のための「田舎暮らしと快適古民家塾」を開催していますが、かなりの反響をいただいています。
◆職人さんをどのように守り育てていこうとお考えでしょうか? 会社を始めた頃からの職人もいます。現場では一番えらいのが大工さんです。ですから俺が一番だという誇りをもっています。そういう誇りのない人はダメです。昔の大工さんは、宮大工ができるくらいの技術力をみんな持っていました。これからは、高度な技術を要求されない工業化住宅いわゆるプレハブ住宅がもっと増えていくことになるのではないでしょうか。20代30代の大工さんは、カンナすら満足にかけられなくなっています。40代後半以上の高度な技術力を持った職人と二極化しています。若い職人も腕のいい棟梁に出会えば、まだ技術の伝承もしてもらえるとは思うのですが、そういう意味でも、当社の技術を持った職人が若い職人に技術を受け継いでいってもらえるような仕組みづくりをしていかなければと思っています。
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