◆団体にされたのはそういう流れの中でからだったのですね。
私としては仕方なく(苦笑)1999年にNGO沖縄をつくりました。私はこの団体を作るときに実は覚悟をしていました。こういう世界は甘くはありません。みんな「善」の部分だけを見るけれども、必ず逃げる。団体の維持費、活動費が確実に毎月出ていくわけです。この経費が必要であると知った時にみんな手を引くであろうと思っていました。案の定、設立時の人たちはみな去っていきました。神輿に乗せられ、バーンと降ろされたわけですが、それも当然のことと思っていました。3年間くらいは、自分ひとりで頑張ってきました。当時はまだ信用も無い団体でしたから、会費も募金も集まりません。自分の持ち物をすべて売り払ってつぎ込みました。人を巻き込むにはこれは当然のことなのです。その時が一番苦しかったですね。それに比べたら今は何が起きてもどうということはありません。(笑)
また、こういう団体をやっていくのは、誹謗中傷に負けないという強い信念をきっちりと持たなければできません。一の悪は百伝わり、百の善は一も伝わりません。いろいろなことを言われます。信用も友情も失うという覚悟が必要です。しかし、人間の命を支えるということは偉大なことです。だから、私は大丈夫です。
◆世界の貧しさの現状とは?
地球上には65億人の人々が暮らしています。その中で私たちのような豊かな国、日本、アメリカ、ヨーロッパなど先進国と呼ばれる国に暮らしている人々の2割、50億人以上がアジア・アフリカなどの貧しい国、発展途上国で暮らしています。栄養失調状態の人が11億はいるといわれています。貧しさゆえに、3秒に1人、1日に4万人以上もの命が奪われています。さらに深刻なのは、亡くなっていくのは、殆ど子どもだということです。粗末な食事が1日に1食、栄養失調、劣悪な環境のため、 風邪や下痢でなどで死んでいきます。
貧しい国の人々が苦しんでいる原因は私たちのような豊かな国とも大きな関係があります。世界中の人が生きていける食料は充分にあります。しかしそれではなぜこれほど苦しむのでしょうか?豊かな国に住んでいる人々が、世界の食料の7割を2割の人が消費しているのです。世界一贅沢なのは、アメリカと日本で、日本の食料の2割は捨てられ、それは 7000人分の食料にあたります。 日本の食糧援助は年間1000万トン、廃棄されている食料は2000万トンです。 私はこれまで、800校以上の学校で講演をさせてもらっていて、その学校で給食を見せてもらうこともあるのですが、その学校給食のすさまじいまでの残飯をみて、日本の子どもたちは「食べ物を大切と思う心を失った」と感じました。もともと、日本人は食べ物を大切にする国民でしたが、今の日本は、世界で一番食べ物を粗末にする国といっても過言ではありません。これは、大人の責任です。今こそその大切さを真剣に考えることが大事だと思います。
◆NPOアジアチャイルドサポートの活動についてお伺いします。
タイでは、エイズ孤児施設の支援事業、モンゴルでは、マンホールチルドレンの支援事業、ミャンマーでは、元ハンセン病患者の支援事業、小学校建設等の教育支援事業、井戸設置事業(命の泉)、発電所建設事業、孤児救済施設の開設、カンボジアでは、地雷被害者、障害者農業支援センターの建設、障害者職業訓練センターの開設、地雷被害者住宅への井戸建設、小学校建設、学用品等の物資の支援事業、命の泉事業(小型ポンプ式井戸100基建設)孤児救済施設の開設などをやってきました。現在では、ミャンマーとカンボジアに事務局を設立し、現地スタッフはミャンマーには日本留学をしたミャンマー人が4名、カンボジアには日本人の駐在員が1名います。モンゴルは通信員を置き、これから新しい施設をつくる準備をしています。モンゴルの女の子が団体の支援で日本に留学しており、彼女がモンゴルに帰ったら、リーダーとして施設を運営していくという長期的な計画を持っています。沖縄の事務局は、職員が5名おります。現在の会員数は、4000名ほどいますが、沖縄は800名です。本土に3200名のサポーターがいます。講演の依頼も全国からあります。その為、東京に事務所を作りました。
フィリピンやカンボジアのゴミ山に住む子どもたち、カンボジアの地雷原の中で生きる子どもたち、ミャンマーの汚れた水を飲み続けていた子どもたち、 ミャンマーのハンセン病の人たち、タイやカンボジアの貧しさゆえに売られていく娘たち、 モンゴルのマンホールに住む子どもたち、彼らはどんなに苦しくても、一生懸命生きることを私たちに教えてくれています。そんな彼らの命を大事にしたいと思って活動しています。
◆このような活動で難しい点はどのようなことでしょうか?
現場で、信頼できる人脈を作り、施設を作っていくまでが大変です。相手は発展途上国、善意と信用だけではやっていけない世界です。管理という猜疑心を持たないと子どもたちは守れません。子どもたちを管理する大人たちとどう付き合うかが一番大事なのです。こういう国際交流は甘くはありません。私もたくさん騙されて痛みをたくさん味わって今があります。長い経験と実績ですね。
私が講演で皆さんにお見せしている映像は、私自身で取材をしたものです。普通は危なくて入れないところばかりで、援助を欲しているところでもないわけです。何があっても仕方がないと腹をくくって、飛び込んで行きました。万が一という言葉がありますが、万が千なんですよ。ゴミ山でドロドロになってゴミを拾っている人を、豊かな国の人間が写真を撮っていたら、現地の人は頭にきますよ。殴られるのは当たり前、斬りつけられたりと危ないことは何度も経験しました。今生きているのが不思議なくらいです。
今では、ミャンマーに私が行くとなると、「池間さんを守りなさい」と何百人もの人が集まってくれるようになりました。嬉しいことで、ずいぶんと動きやすくなりました。
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