◆活動で大切にしていることは?
マインドは熱く、しかし頭は冷静にやっていかなければ多くの人は支えることはできません。私は特定の一部の子どもたちの幸せは願っていません。ひとりでも多くの子どもたちを当たり前の人間的な生活をさせることが、われわれの目標です。だから、一切愛情は入れるなと職員たちには言っています。遠くから見守るという姿勢が大事です。それが本当の愛情です。淋しいですよ。私がモンゴルでマンホールから救い出した子どもがいますが、その子が一番かわいいですよ。でも抱きません。ひとりを抱けば全員を抱かなければいけないのです。ハンセン病の人も一番ぼろぼろになった人を抱きしめます。それは度胸がいります。そうすることでみんなが私をわかってくれるのです。
私は、二つのことを大事にしてやっています。一つは、大変な状況で生きている人々・子どもたちをなんとかしたいと思う心、もう一つは、皆さんから集まる大切な浄財をきちんと使い、公明正大に発表するということです。ですから、不正は絶対に許しません。その為にも、新日本監査法人に、監査をお願いしています。皆さんからの募金や寄付は、全て現場に投入しています。
この団体は命を守る仕事をしているのだから職員はプロとして命をかけるのは当たり前だと考えています。ボランティア団体だから適当にということは許しません。ですから職員たちの給料は福利厚生も含めて生活がきちんとできる水準を維持しています。
◆私たちが始められるボランティアとは、どのようなことでしょうか?
よく、「ひとりひとりの小さな力」といいますが、それは違います。「ひとりひとりの大きな力」です。たとえば、アジアチャイルドサポートに毎月1000円の募金をしてくださるサポーターの方がたくさんいますが、その毎月の1000円がすごく大きな働きをするのです。その募金で、ミャンマーに井戸がどんどん建設でき、16万人の命を守っています。ハンセン病の人たちも、約600名が安心して暮らしています。 ボランティアとして、3つのことをお願いしています。
一つ目は、「知ることも大切なボランティア」です。毎日、貧しさのために多くの命が失われています。その殆どがいたいけな子どもだということを知ってください。
二つ目は「少しだけ分ける」ことです。皆さんの優しい心を少しだけ分けてください。私は100円がなくて失われる命をたくさん見てきました。私たちがこのような問題に少しだけでも心を向けると、間違いなく多くの命が救われます。私が知っている経営者や成功者に共通することは、必ず誰かに「分ける」ことをされています。素晴らしいことです。
そして、一番大切なボランティアは何か?人のため?世の中のため?貧しい国の恵まれない子どもたちのため?とんでもない!それは「最も大事なボランティアは自分自身が一生懸命生きること」です。私はアジアの子どもたちの話をして映像を見せて「彼らがかわいそうだから助けてください」と訴えているわけではありません。この子たちは、どんなに苦しくても辛くても一生懸命生きています。ゴミ捨て場で暮らしている子どもたちから、マンホールチルドレンから、一生懸命生きることの大切さを学んでほしいのです。沖縄では、私の続けた講演活動により、マンホールチルドレンを知らない学生はいなくなりました。伝えることが多くの人の命を支えることにもなるのです。
◆池間さんの目指すものは?
豊かさの中で生きる私たちは、人間として最も尊いことを失いつつあるように感じてなりません。特に日本の子どもたちの生きる力の弱さに心が痛みます。自殺者が3万人を超えました。その殆どが、若者と働き盛りの大人です。こんな異常な国は世界中どこにもありません。 私の元には2000回近くの講演活動の中で、10万人に及ぶ感想文が届いています。その90%以上の子どもたちが「命の大切さ、親の有難さ、自分たちがどんなに恵まれているか解かった」と書いています。刑務所での講演もしました。受刑者の中にも、「もっと早く池間さんに会いたかった」と刑務所の労働で得たお金を毎月送金してくる人もいます。
アジアチャイルドサポートの理念は、国際協力を通した日本の子どもたちの健全育成運動です。 自分がやりたいことが見つからない、今やっていることは本当の自分じゃないと、自分探しの旅に出る人もいるけれど、それは違う。みな自分の中に持っているのだから、今あることをちゃんとやっていけば、自分の中の引き出しが開いて、夢が出て来るんだよ。頼むから探しに行くなと言っています。これは自己体験でもあります。この活動を初めから命をかけてなんて思っていませんでしたから。最初は喜んでくれる人がいて楽しいなあと思っていたくらいで、やっていくうちに子どもたちのすごさや、命がけで生きている子どもたちを尊敬するようになってから、大事に思うようになり、一生かけてやっていこうと決めたのは、何年か経ってからのことです。その時その時を真剣に見つめていたから、今があると思っています。
自分が一生懸命生きることを伝えたい。そして、一生懸命生きることで、他人を思いやる心が育つことを知ってほしい、そう願って止みません。
|