◆新会社への移行は順調でしたか?
1ヵ月半、会社を作る準備を仕事が終わった後、会社で深夜まで続け、8月末に設立しました。社長が大変応援してくれて、設立資金に回すようにと残業手当を付けてくれました。9月最後の日社長が来て最後の夕礼が始まりました。そこで社長から「今日でこの会社は終わります」といって去りました。そこで私は「エヌ・イー・ワークスという会社をつくりました。しかし、雇ってあげようといういい会社ではありません。一緒にやろうという人は明日からやりませんか」と語りかけました。結果、翌日から、30名ほどいた従業員がひとりも辞めることなく、エヌ・イー・ワークスをスタートさせることができました。すべてのお客様も継続して仕事をくださり、普通の起業の仕方とはちょっと違っていました。
◆ご家族は納得されたのですか?
狭いところですから、どこからリークされるかわからないので、妻に話したのは一週間前でした。家族を説得させるのは大変でした。そもそも転職した時期が不景気で、「頑張るのは良くわかるけれど、自分で会社をやるということはワケが違う」と大反対でした。しかし私は離婚覚悟の決断でした。家族は自分が一生懸命頑張って結果を出せば何れ元に戻せる。しかし、一度バラバラになってしまった従業員をもう一度集めることは不可能です。私はこの地域で雇用をつくるために工場を作ったのですから、二者択一をしなければならないとすれば、社員だと思ったのです。その時はいい意味で冷静さを失っていました。27歳という若さがさせたのでしょうか。今もう一度やれといわれたら自信がありません。(苦笑)
私は、従業員を一緒に働く「仲間」と考えています。
◆エヌ・イー・ワークスの社名の由来は?
エヌ(N)は、仁多の「N」・・・地元に根ざす
イー(E)は、Electronicの「E」
ワークス(Works)は、働く場
頭文字ととると「NEW」です。これからは新しい人材、新しい感性、新しい環境で事業展開を考えなさいと、お世話になった社長が付けてくれました。
その社長からいただいたアドバイスがありました。「会社経営の失敗例はだいたい何パターンかに分かれる。成功例は十人十色、人のマネをしても絶対上手くはいかない。学ぶのであれば、失敗例の本を読むといい。これは本当に勉強になる」
◆現在の業務内容についてお伺いします。
現在、電子部品製造部門、人材事業部門、お菓子・機械加工部門の3部門の事業を展開しています。地域に雇用をつくることが目的の会社ですから、明日からでもできるようにと、貴金属販売、中古車販売、福祉、介護保険、鍼灸、・・・と定款には社員の要望も入れて50以上の業種が入っています。
従業員は正社員73名、パート、アルバイト、契約社員を含めて全体で110名おります。現在、工場が5つありまして、第1工場では高圧酵素分解設備を使用した機能食品研究開発による新規事業に向けた取り組みの実施、お菓子の焼成〜包装、計測器組立・検査をしています。第2工場では厚膜抵抗基板・圧力センサ等の組立・検査、カメラモジュール検査をしています。第3工場では、携帯電話キャビネットの組立・検査を行っています。第4工場シリコンウエハの穴あけなどの機械加工作業、第5工場では、機械加工や押し花せんべいの生地製造等をしています。
◆人材派遣の仕事もされていらっしゃいますね。
1985年、製造現場で派遣が解禁されたタイミングで認可を取りました。もともとの労働者派遣法は、労働者を失業させずに次の職場に導くことであって、私はその法律の趣旨どおりにやろうとしました。社員が100人、200人になって、思うように仕事が取れなくなったとしても、社員を解雇したくはありません。周りの会社に何人か預かってもらい、また仕事ができたら帰って働いてもらう。これをきちんと対価をやり取りしてするには労働者派遣法の認可を取っておくことがいいだろうと判断しました。人材派遣を商売にする為ではありません。人材派遣には、単純派遣、請負派遣、そして戦略的派遣があります。
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