◆確かに、愉しい経営ですねえ。(笑)ところで、去年社長を息子さんに譲られたそうですが、どのように継承されたのですか?
「お父さんとしては、一生懸命やってきて結構儲かる会社になってきている。消してしまうのはもったいない。やる気がなかったら誰かに渡すけれど、本当は息子であるお前がやってくれることが、お父さんの希望なんやけど、やってくれるか」と、ありのまま言うたんです。そうしたら息子から「やります」という答えが戻ってきました。
よく子どもが跡を継がへんというのは、親父である社長が「儲かれへん」とぼやいていることが多いですね。そんなもの子どもはやりませんよ。お父さんが楽しくやっていて、儲かる仕事だったらみんな継ぎますよ。
私の片腕の専務に、社長(息子)のことを任せ、社長には、専務に教えてもらえと言ってあります。社長は社長で、これから一緒にやってくれる片腕になってくれる人をこさえていっています。
◆息子さんの経営について心配はありませんか?
そりゃあ、心配はありますよ。どこもそうじゃありませんか。時には「こら!お前なにしてんの」と言いたいんですけどね、我慢して声を荒げないようにしていますわ。(笑)失敗もさせなあかんしね。今年の不景気はええ勉強ですわ。社長になって本人は本人なりに悩んでいるでしょうが、やりたくてできるチャンスじゃあないわけですから、こういう時にしかできないことをやればいいんだと思っています。この時代の波に遭遇していることが、必ず将来生きてくると思っています。(笑)
◆「大丈夫だ石」を発明されたそうですが、それはどういうものですか?
13年前に作りました。子どものPTAの会長になりまして、会社で仕事をしているときはいいんですが、人前で話をするのは苦手で緊張してしまうんですわ。「どうにかせないかんなあ」と思っていた時に、工場でいつも持っているステンレスを持っていれば大丈夫かもしれないと思い、ステンレスの塊を持って出かけました。それがなんと上手くいきました。そこで丸く、握りやすいように窪みをつけ、素材も重みのある銅に変え、ありがたみのあるような形にしました。その年のお歳暮にお得意さんなどに配ったら、それが好評で、40周年の会社の記念品に1000個!なんて注文がきました。そこで商品化することになり、一休さんが残した大好きな言葉「心配するな 何とかなる」と、おふくろの口癖だった「大丈夫」を合わせて、「大丈夫だ 心配するな 何とかなる」と私が書いて刻み込んだ「 大丈夫だ石」をつくりました。
面白半分につくりましたが、ある日、石川先生がどこかで見つけられて、突然電話をくれて、すぐ大阪に飛んでこられました。石川先生は、全国に数万人の人脈ネットワークをお持ちの経営コンサルタントの先生で、大手ビールメーカーの大ヒット商品のコンサルや講演、研修で引っ張りだこの人です。石川先生の協力で、雑誌・新聞・ラジオなど、60誌以上で取り上げてもらいました。大阪の山岳隊がこの「大丈夫だ石」を携帯してヒマラヤに初登頂したことで、ずいぶんと売れました。(笑)よく買うてくれるのは、飛び込みの営業マン、受験生の親、意外なところで国税調査官、落語家さんもおられます。(笑)おかげでなんと30万個も売れました。しっかり儲けさせてもらいました。(笑)
◆ホームページに、大阪へいこう!大阪で遊ぼう!「Osaka Experience Village」とありますが?
私が大阪観光協会の会員でもあるんですが、観光協会から「外国人がもっと大阪に来て欲しい。そのために事業を立ち上げてくれ」と頼まれました。それで、今年の5月にOsaka Experience Village(大阪体験村)というものを私の会社の中につくりました。大阪のかつての釜ヶ崎(現 西成地区)のドヤ街が今では洒落たホテルになっていまして、外国人観光客が年間5万泊も利用があるそうです。その観光客がホテルのフロントに「何かマニアックでおもしろいことないか?」とよく相談に来るそうです。そこで、大阪を旅行する外国人が日本を体験できる講座をいろいろ作ろうということで立ち上げました。現在は、日本の家庭料理をつくる講座や、一般家庭で初心者のための茶の湯体験講座、そして私が先生をする習字の体験講座などがあります。先日の習字の講座は、工場の二階で、半切に「日々是好日」と国名と名前も漢字にして書かせました。外国人は漢字にとても興味を持っているので、すごい土産になったと大喜びしていました。その後も口コミで申し込みが来るようになりました。今はまあボチボチやっています。先日堺の異業種の会の仲間に話したら、線香屋さんや座禅道場をやっている人などが、参加したいといってくれました。いろいろな講座を増やして行きたいと思っています。
◆チベットの本をかかれていらっしゃいますね。
今年の9月に3度目のチベットに40日間行きますよ。2006年に「参加しないと損しますぞ」と70歳の隊長からの脅迫めいた誘いを受け、決意して出かけた西チベット40日間の旅のエッセイ集が「西チベット大紀行」です。仕事をほっぽらかしてでもいこうかと思う人はあまりいませんが、隊長はそのうちの一人です。6人でいきますが、3人は登山家で、3人は素人です。もちろん私は素人ですよ。2007年にも行きました。また今年の9月にも行く予定です。風呂もトイレもない。どこがいいんでしょうねえ。チベットは天梯の国、標高4000Mに大草原があります。そこで見る空の青さ、雲の白さ、風、空気、これは格別なものを感じます。何といって特別なものがあるわけではないけれど、また行きたくなるところですねえ。ランドクルーザーでひた走り、途中からは馬で山奥に入って行きます。しんどいことはありませんよ。お酒もおいしいですしね。(笑)どうです、一緒に行きませんか?(笑)
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