◆それからどうなさいましたか?
次の仕事は、人材会社のキャリアコーディネーターです。職業紹介も人材派遣もやっていて、一気に人材ビジネスの2分野を怒涛の勢いで経験することになりました。営業が勝負の人材ビジネスは、学校や団体とはスピード感がまったく違い、自分の脳みそが活性化していく音が聞こえるような日々でした。
同時に、目の前の案件に追われるような働き方では良い結果が出せないと思い、休日を活用してキャリア理論を学びました。
キャリア理論の講座を修了するころ、主催していた人事コンサル会社の社長に、一緒に仕事をしないかと声をかけていただきました。学んだことを人材会社で活かそうと思っていたので、迷いましたが、講座の内容が非常に面白かったので、これを世に広めることにかかわるチャンスなら、と思ってまたも転職しました。
人事コンサル会社では2つの肩書を持つことになりました。人事コンサル会社の「事業開発部長」と、この会社が運営するキャリアカウンセラー団体の「企画部長」です。
「事業開発部長」としては、企業の人事制度再構築や社員研修などの受託が主な仕事でした。「企画部長」としては、行政の就業支援・学校のキャリア教育事業などへの協力と、キャリアカウンセラー団体の会員向けにブラッシュアップの研修や情報発信を行いました。
情報発信にはメルマガと並行して公式ブログを活用しました。団体の公式ブログも担当し、ブログというツールの面白さを知りました。今は自分のブログを毎日更新しています。
・・・と、色々なことをしてきました。一見ばらばらですが、振り返ってみると、常に「人の力を引き出す」ことと関連があり、最初に就いた教職の影響を感じます。
◆では、現在の仕事を立ち上げる経緯は?
いちばん大きなきっかけは、結婚によるライフスタイルの変化です。
人事コンサル会社やキャリアカウンセラー団体の仕事は、非常に面白いと同時に長時間のハードワークでした。休日も何もないような状況でしたが、家には寝に帰るだけでもかまわないと思っていました(笑)。
しかし、結婚し、夫と義母と3人の生活に入ると、人間らしいリズムの生活を取り戻し、同時にそれまでの異常さに気づきました。キャリア支援とは、人が満足いく仕事と生き方を追求するお手伝いなのに、自分はそれを見失っていたのです(苦笑)。
そこで、「人と仕事の幸せな関係」を自ら実践し、同時に実践したい方をサポートしよう、と考えて独立しました。
◆どのような活動をされているのでしょうか?
現在のところ、キャリア教育や人材採用・育成にかかわる研修と、キャリア関連の記事執筆の受託が主な活動です。
研修は、学生向けビジネスマナー講座、就活セミナー、大人の再就職講座、社会人のリーダーシップやタイムマネジメント研修、採用担当者の面接トレーニングなどです。珍しいところでは、大学院生の企業への就職活動支援セミナーもやっています。
執筆では、読売新聞社のサイトで「しごとQ&A」および「院生の就活」という連載を持たせていただいているほか、再就職のすべてのプロセスをカバーするテキスト「キャリア移行プログラム」などの実績があります。
自主企画として、「古川晶子の幸せキャリア塾」を毎月開催しています。自分で開発した、「キャリアフォーカス・セッション」という手法で、仕事のやりがいや将来の構想、職場の人間関係など、共通の課題に興味を持つ人どうしでグループセッションしながら、悩みや問題を解決する方向性やヒントを見つけるというものです。ファシリテーターは課題の設定と進行のコントロールをします。現在は求職者が主な対象ですが、あらゆる世代・立場の方に有効なプログラムです。
今後は、学校のキャリア教育にもっと積極的にかかわりたいと思っています。キャリア教育の内容やキャリアセンター機能のコンサルティング、進路指導にあたる教師のサポートなどを通じて、学校と社会をつなぎ直す役に立ちたいです。
◆古川さんにとって「キャリア」とは?
キャリアとは、「人生を構成する一連の出来事」です。
ドナルド・E・スーパーというキャリア論の研究者の定義で、成人するころから引退までの期間に経験することや担う役割は、組織に属している・いないにかかわらず、あるいは報酬・無報酬にかかわらず、すべてキャリアである、という趣旨です。
現在の、思いがけないところから新しいビジネスが生まれたり、盤石と思っていた地位が、環境の激変によって崩壊したりする時代に、いたずらに不安にあおられることなく自分の手で道をつくるために有効な、素晴らしい考え方だと思います。
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