◆ 日本の綿花の自給率は?
日本における原綿は現在99.99%が外国からの輸入です。それに綿製品の約90%も海外からの輸入品です。現在オーガニックコットンは、インド、パキスタン、トルコ、シリア、カンボジア、中国、アメリカなどで作られています。農業を考えた時、特にインドや東南アジアなどでの低い衛生観念、そして農民の人たちは文盲が多く危険な農薬の取り扱いも分からずに使用していることなどもあり、農業に従事している人たちの環境は必ずしも良いものではありません。インドでは、農薬による疾患や借金を苦にした自殺が増えているという現実もあります。児童労働という問題に関しても、子どもの労働賃金のほうが安く、それがベースに組み込まれているのが実情です。その結果子どもは学校に行けずこれがまた文盲率を高めることにもなっています。私自身、オーガニックコットンに携わることがなかったら、こういった現実を認識することもなかったと思います。 これらのことから、児童労働の撤廃と予防に取り組む国際協力NGO NPO法人ACE(http://acejapan.org/)や、カンボジアでオーガニックコットンを育て、伝統の手紡ぎ糸を復活させ、地雷被害者とその家族を支援するためのNOP法人地雷原を綿畑に!Nature Saves Cambodia!(http://naturesavescambodia.org/)の活動にも参加しています。
◆ オーガニックコットンの市場はどのくらいですか?
世界でオーガニックコットンは、1%の市場占有率になりました。一つの区切りとして、目標は10%に置いています。10%になると世の中は変わります。日本の中でもずいぶんオーガニックコットンが認知されてきました。 人の肌に触れて毎日使うものは、安全で安心なものであって欲しい。そんな当たり前のことを、私たちはともすれば忘れてしまうものです。当たり前のことを続けていくことは、今の時代とても難しいことです。と同時にとても意味のあることだと思います。かつて自然の恵みに感謝しながら、日々の糧を得ていた頃の気持ちを、21世紀の営みの中で取戻していきたいと思っています。 私は世の中に新しいことを根付かせる水先案内人という使命を持っていると学生の頃から思っていました。ですから、日本にオーガニックコットンがある程度認知されるまで自分の仕事だろうと思って、この20年間は自分の100%を費やしてきました。これからはもう少し人にかかわることもやっていきたいと考えています。
◆ 人にかかわることとは、具体的にはどのようなことでしょうか?
2010年3月に渋谷百軒店に深夜帯は女性専用となるインターネットカフェ「カフェMELT(メルト)渋谷店」をオープンしました。橘ジュンさんが、深夜新宿や渋谷でたむろしている子どもたちの声を聞き、フリーペーパー「VOICESマガジン」の発行や夜の声掛け、電話・メールでの面談などを通して「居場所のない子どもたちが自分を表現し、社会につながりを持ち、自立できるようになること」を目指す活動を続けています。私は橘ジュンさんの講演、を聞いたときに、自分の居場所を持たない自分の存在すらも認めることのできない若者たちがなんと多いことかということを知りました。私の娘が今15歳です。その渦中にある年齢であるということを考えるととても無視して通ることのできない問題だと思いました。そこで、橘さんが個人でやっていたこの活動をNPO法人化し、五島祐さんと私で理事としてサポートしています。そしてこの活動に安定的に収入が入るように「株式会社MELT」も立ち上げ、インターネットカフェの運営をスタートさせました。 信州大学繊維学部とのコラボで、長野県でオーガニックコットンの栽培をしています。この事業は、日本の伝統産業である繊維業を守るためでもあり、またこういった若者たち、障害をもった人たちの就労支援の場にもしていきたいと考えています。
大好きな言葉または座右の銘は?
「敬天愛人」です。天を敬い人を愛すという意味です。この「敬天愛人」は、アバンティのphilosophyでもあります。
渡邊さんの夢は何でしょうか?
1長野県に私たちの一番のルーツである綿畑に囲まれたアバンティ村をつくることが、10数年来の夢です。女性の二大事業は子育てと介護だと思っていますが、それを何らかの形で会社がサポートしていかなければ、女性がキャリアを積むことは難しいことです。会社に来る手前にデイサービスや保育園をつくり、そこに両親や子どもたちを預けて仕事をする。そして、先ほどお話しした若者たちやハンディキャップを持った人たちとも一緒に仕事をする、そういうアバンティ村が私にとっての夢です。この夢に向かって着々と進んでいます。5年後くらいには実現したいと思っています。
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