現在の業務内容は?
この10年ほど働いた時はなかったですね。1日の睡眠時間が約3時間、それを10年続けましたが、人生の中で一番濃い時間でした。その10年に私のプライベートな時間はありませんでした。婚期を逃したのもこの10年があるからなんですよ。(笑)考えてみると、いい時期に会社を継がせてもらったと思います。順風満帆な状態で会社を引き継いでそこからドンと落ちるより、最悪な事態で受け継いで何とかやっていけるところまでこられたということは、いい経験をさせてもらったと思っています。
現在の業務内容は?
印刷業から情報加工業への転換を目指す中で、業務内容も大きく変化しました。商品券・入場券などの特殊印刷、コピーすると「複写」の文字が浮かび上がるコピー偽造防止用紙、擦ってもゴミの出ないスクラッチ加工などは社員のアイデアで、自社開発しました。各種帳票類、カタログ・チラシ、大判ポスターの企画・デザインから印刷・加工までワンストップでできます。また、セールスプロモーション用ツールやホームページの企画制作、看板のデザイン、顧客のデータベースの管理など、業務の幅を広げています。現在では映像も手掛け、コマーシャルづくルも行っています。
印刷業は、IT化がどんどん進んでいく中で、産業構造が大きく変化しています。その中で何をしていったらいいのかということについては、経営者としての大きな課題です。この変化の中で文典堂の将来に向けて社員総出で勉強会をやっています。
新しいサービスや提案をお客様にできるようにするにはどうしたらいいかと考えています。お客様の情報を取り扱う会社として、情報加工業であるという位置づけで組織体制づくりをしています。
技術は特殊なものをいうことではなく、人から必要とされるものが技術です。自分たちが技術と思っていても人から要求されなければ、それはただの独りよがりです。お客様から、「いいよね、これ助かるよね。これどういうふうにやるの!」と感嘆詞がつくようなものが技術であると思います。そういうものをもっと大事に育てていかなければならないと思っていると同時に、われわれは情報加工産業なので、より創造的な仕事に切り替えていく必要を感じます。今までに無いものを創っていく楽しさを社員たちに覚えてもらいたいと思っています。
新しい取り組みなどをお聞かせください。
経営理念も就業規則も社長になってから具体的に作っていきました。社長になり、東京中小企業家同友会でいろいろな経営者の方の中で勉強をさせていただき、その中で、社員もみんな自分と同じように働くのが当たり前だろうと押し付けていたところがあった自分に気づきました。私は必死でしたから睡眠時間3時間でやってこられたけれど、社員が3時間しか寝られなかったら、それは幸せなことではありません。2010年からワークライフバランスに取り組んでいます。私はこれまで一所懸命働く社員がいい社員だと思い込んでいました。そんな自分の反省を込めての取り組みです。仕事も大事だが私生活も大事にしてもらいたい。つらい時はつらいといって欲しいし、がんばることも大事だが、休むことも大切です。お互いの働き方も創造的に自主的に考えてくれる人間になってほしいのです。2月から産休に入る社員がいます。二人目ですが、そういう人が増えてくれるのは嬉しいことです。これからは働き方の多様性を認める社会になっていかなければと思います。
好きな言葉は?
「孤に徹し、衆と和す」個人としてのしっかりした考えを持った上で、周りの人と協力し合うことです。
会社を引き継がれてよかったと思うことは?
まだ、分かりませんねえ。これから何人定年まで働いてくれる社員が出るか、それが私の経営者としての評価だと思っています。文典堂で働いてよかったと誇りに思ってもらえる会社にしていくことが私の務めです。
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